日本企業の中国事業を理解する際、毎年公表される「対中直接投資額」だけを見ると実態を読み違える可能性がある。ジェトロは2026年7月の分析で、直接投資を株式資本、収益再投資、負債性資本という3つの要素に分け、日本企業の中国事業における資金の使われ方が変化していると指摘した。
従来の中国進出では、日本の親会社から資本金を投入し、新工場や販売会社を設立する「株式資本」による拡大が目立った。しかし中国事業が成熟するにつれ、現地法人が稼いだ利益を中国国内で再投資する形が重要になった。さらに近年は、利益を日本の親会社へ配当として還元する比率が高まる傾向もみられる。
この変化は「日本企業が中国から全面撤退している」という単純な説明とは異なる。新たな大型工場を次々に建設する時代から、既存拠点で利益を確保し、必要な分野には現地利益から再投資し、余剰資金は本社へ戻すという成熟市場型の経営へ移行している企業が増えていると考えられる。
日本企業が中国法人を運営する上では、利益をどこへ配分するかが重要な経営課題になる。中国で研究開発、設備更新、販売網強化を行うなら再投資が必要になる一方、将来の投資需要が小さい場合は配当による資金回収も選択肢になる。配当では中国側の企業所得税、源泉税、日中租税条約、銀行手続き、監査などを確認する必要がある。
また、中国の政策は外資企業による中国国内での再投資を奨励している。未分配利益や中国国内で合法的に得た利益を新会社設立、既存企業への増資、持分取得、プロジェクト投資へ振り向ける場合に、投資促進策を活用できる可能性がある。したがって「日本へ送金するか、中国で再投資するか」は、税務だけでなく今後の中国事業計画と一体で判断すべきだ。
中国事業の評価では、単年度の投資額だけで撤退・拡大を判断するのではなく、現地法人の利益、設備投資、配当、内部留保を合わせて見る必要がある。日本企業にとって中国は、新規進出中心の市場から、既存資産をどう運用し収益を回収するかが問われる市場へ変化している。